読後感想文『藍を継ぐ海』
以前、一緒にセミナーに参加したメンバーと久々にWeb同窓会をした際のことです。
メンバーの一人TKさんが「私の友人(旦那さんの親友)が直木賞を取ったんです!」と言いました。
私は「え?どの程度の友人?」と心の中で疑問が浮かびましたが「結婚式に来てくれました」とのこと。
すみません、本当の友人(親友)だったのですね……と思い、罪滅ぼしではありませんが、伊与原新さんの『藍を継ぐ海』を購入し、読んでみました。
『藍を継ぐ海』の概要
『藍を継ぐ海』は、伊与原新さんによる短編集で、日本各地を舞台にした5つの物語が収められています。

夢化けの島
山口県を舞台に、地質学者と萩焼の土を探す人物の物語で、島の歴史が興味深く描かれています。
狼犬ダイアリー
奈良県で、ニホンオオカミかもしれない生物と出会う少年の物語です。
祈りの破片
長崎県で、原爆やキリスト教信仰などの歴史と地域の人々の営みを描いた物語です。
星隕つ駅逓
北海道を舞台に、隕石と郵便局、アイヌの歴史が織り交ぜられた物語です。
藍を継ぐ海
直木賞を受賞した表題作であり、徳島県の海辺の小さな町を舞台にした、ウミガメをめぐる物語です。
直木賞受賞作『藍を継ぐ海』の感想
私は普段、主にビジネス書を読むことが多く、小説にはあまり馴染みがありません。
にも関わらず、今回『藍を継ぐ海』を手に取ったのは、著者の伊与原新さんと親しいTKさんから紹介されたことがきっかけです。
著者の伊与原さんは、神戸大学理学部・東京大学大学院地球惑星科学を専攻されており、その科学的な視点や歴史的背景を織り交ぜながらのストーリー展開に引き込まれました。
『藍を継ぐ海』は、海辺の町で暮らす少女がウミガメを孵化させる物語ですが、単なる成長物語ではなく、彼女の孤独や葛藤、そして自然との向き合い方が丁寧に描かれていました。
この内容が私には「ウミガメ育成プロジェクト」に思えました。試行錯誤を繰り返しながら知識と経験を積み重ね、前進していく姿は、社内でサポートの少ないプロジェクトを生き抜く姿と重なり、昔の自分を思い出しました。
作品を通じて感じたこと
徳島は、一昨年にお遍路でリュックを背負って歩いた場所です。作品では「自然との関わり方」が多く描かれており、とても興味深かったです。
私は海辺で生活した経験はありませんが、本書を読んで改めて、人間が環境とどのように共存していくべきかを考えさせられました。
また、本書は科学的な視点や歴史を交えながら語られており、知的好奇心を刺激する作品だと感じました。
普段ビジネス書を読むことが多い私でも、学びの多い一冊でした。
知人がこの本を勧めてくれた理由が、読後にようやく理解できた気がします。
おわりに
今回、『藍を継ぐ海』を読んで、小説には娯楽以上の価値があることを実感しました。
特に、本書のように科学的な知識や歴史的背景を交えて描かれる作品は、単なる物語以上の学びを提供してくれます。
すでに同じ伊与原さんの『宙わたる教室』は購入済みなので、次の読書も楽しみにしています。