【特定技能支援の現場から】通じるはずの日本語が通じない―外国人が戸惑う“方言の壁”

日本語ができるのに通じない理由

日本で働く外国人の多くは、日本語能力試験N4レベルをクリアし、ひらがなやカタカナを読み、日常会話もできる状態で来日します。

しかし、実際の職場では「日本語が通じない」という場面に直面することが少なくありません。
その理由の一つが、方言の存在です。

教科書で学ぶ日本語は標準語です。
「あなたは朝ごはんを食べましたか?」という丁寧で分かりやすい表現には対応できます。しかし現場では「飯食った?」という言い方が普通に使われます。

この違いだけでも理解のハードルは一気に上がり、同じ意味であっても「わかりません」と返されることが起きてしまいます。

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方言が引き起こす現場の混乱

さらに難しいのが、方言特有の言い回しです。

例えば「ほかっといて」という言葉。
地域によっては「捨てておいて」という意味ですが、別の地域では「保管しておいて」と受け取られることがあります。
実際に指示を誤解し、捨てずに保管してしまったというケースもあります。

また、「さら取って」と言われて「皿?」と勘違いする例もあります。
「さら」が「新品」を意味することを知らなければ、正しく理解するのは難しいでしょう。

こうしたズレは業務ミスにもつながりかねません。

日本人同士でも起きるすれ違い

実はこの問題は外国人だけのものではありません。
強い方言を聞き取れず、「外国語だと思って別部署に回したら日本語だった」という笑い話もあるほどです。

同じ県内でも言葉の違いがあり、関西と関東では当然ながら表現も大きく異なります。

つまり、方言は日本人にとっても完全に共有された言語ではないのです。
日本人同士でさえ誤解が生まれる以上、外国人にとってはなおさら高い壁になります。

外国人にとっての“見えない壁”

このような環境の中で、外国人は「自分の日本語が通じない」という不安やストレスを抱えます。
仕事の指示が理解できないだけでなく、雑談についていけない、会話に入りづらいといった孤立感にもつながります。

本人の能力の問題ではなく、言語環境の問題であるにもかかわらず、「日本語ができない」と評価されてしまうこともあります。

これは本人にとっても、組織にとっても大きな損失です。

方言対策という新しい取り組み

こうした課題に対し、新たな取り組みも始まっています。

熊本県では、外国人労働者向けに方言ハンドブックを作成し、現場で使われる言葉を分かりやすく紹介しています。これは単なる語彙の説明にとどまらず、地域文化への理解や愛着を深める役割も担っています。

このような工夫は、外国人が職場や地域に早く馴染むための有効な手段となります。

これからの共生に必要な視点

これから外国人と共に働く社会において、「日本語ができるから問題ない」という考え方は通用しません。
むしろ、日本人側がどれだけ分かりやすく伝える努力をしているかが問われます。

少し言い方を変える、理解を確認する、背景を丁寧に説明する。
それだけでコミュニケーションは大きく改善します。
同時に、外国人側も遠慮せずに聞き返せる関係性づくりが重要です。

私たちは中学から英語を学んでいますが、いざ海外で生活するとネイティブの会話に戸惑います。それと同じことが、日本で働く外国人にも起きているのです。

言葉は便利なツールである一方で、誤解や距離を生む原因にもなります。特に方言は文化の豊かさでありながら、相手にとっては壁にもなり得ます。

だからこそ大切なのは、正しく話すこと以上に、伝えようとする姿勢です。
言葉は難しいが、お互いに理解しあおうという気持ちが大切なのです。

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