『今日、だれのために生きる?』を読んで——SHOGENの旅に学ぶ、幸せのありか
最近読んだ一冊の本が、静かに、でも確かに私の心を揺さぶりました。
ひすいこたろうさん、SHOGENさん著の『今日、だれのために生きる?』。
主人公のSHOGENが、アフリカのある村で過ごした時間を通して「本当に大切なもの」を見つけていく物語です。

今日、誰のために生きる?----アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語
ひすいこたろう 著 SHOGEN 著
はじめに——SHOGENの行動力に驚く
目次
最初に惹かれたのは、SHOGENという人の行動力。
彼は一枚の絵を見て、「アフリカに行く」と即決してしまうんです。
その直感と行動力に、まず私は驚きました。
普通なら、調べて悩んで…と考えるところを、彼は直感で動く。
そんなSHOGENが、何を感じ、どんな変化を遂げるのか——それがこの物語の魅力です。
村長が語った「幸せの三箇条」
SHOGENが最初に村に招かれたとき、村長から言われた言葉があります。
これが本当に、心に残りました。
・ごはんをおいしいと感じられるか?
・「ただいま」と言ったときに「おかえり」と言ってくれる人がいるか?
・抱きしめられたとき、あたたかいと感じられる心があるか?
この3つがあなたの中にあるなら、この村で生きていける——
村ではこれを「幸せの三箇条」と呼んでいるそうです。
あまりにもシンプルな言葉なのに、なぜこんなに胸に刺さるのか。
たぶん今の私たちは、こうした“当たり前の幸せ”を見過ごしてしまっているからなんだと思います。
「心がここにない」と言われ続けたSHOGEN
村で過ごす中で、SHOGENは何度もこう言われます。
「あなたの心は、ここにない」と。
彼は絵を描くアーティストで、村の子どもたちにもその姿を見せます。
でも、村人はそれを見て「誰のために描いているのか?」と問いかける。
一生懸命やっていることに、思いがこもっていなければ意味がない——
そうした価値観が、村の人々には深く根づいているのです。
印象的なエピソードがありました。
SHOGENが村長の家で夕食をごちそうになった2日後、村長に「何を食べたか覚えてるか?」と聞かれ、彼は答えられなかった。
その時村長は、静かにこう言います。
「あなたはいたけれど、心はそこにいなかった」
仕事のこと、結果のこと、未来のことばかり考えて、“今ここ”を生きることを忘れていた——それは、私たちの多くにも当てはまるのではないでしょうか。
かつて日本人が教えたはずの価値観を、今の私たちは忘れていないか?
村の人々は、かつて日本人から多くのことを学んだと言います。
時間を守ること、人を尊重すること、誠実であること。
しかし今、日本から来たSHOGENを見て、こう言うのです。
「あなたは、私たちが尊敬していた日本人とは正反対だ」と。
この言葉に、胸が痛みました。
効率や成果ばかりを追いかけて、本当に大切にすべきことをどこかに置き去りにしていないか。
かつて日本人が誇りにしていた“他人のために動く心”や“丁寧に生きる姿勢”を、私たちはいつの間に忘れてしまったのでしょうか。
「時間を何に使うか」は自分で決められる
本を読み終えて、私自身も思わず立ち止まりました。
時間があればもっと仕事ができる——そう思っていた自分。
でも、その時間を「家族と一緒に過ごす」ために使ったことはあっただろうか?
休息を削ってまで仕事に没頭していた私は、むしろ“恥ずかしいこと”をしていたのかもしれません。
村の人たちは、仕事に誇りを持ちながらも、時間になったら仕事を止めて、家族との時間を大切にします。
その姿勢には、静かな強さとあたたかさがありました。
まとめ:「今日、だれのために生きる?」と問われて
この問いは、今の私たちにとって、とても大きなテーマです。
正直、すぐには答えられないかもしれません。
でも少なくとも、「心をここに置くこと」だけは、今日からでも意識できる。
ただ「いる」だけでなく、「心をそこに置いて過ごす」
そんな時間を一日一回でも持てたら、人生は少し変わるかもしれません。
『今日、だれのために生きる?』は、私にとって、“心のありか”をもう一度見つめ直すきっかけになった一冊でした。