職場に広がる「静かなる分断」とは? マネジメントに悩む私たちが今すぐ始めるべき小さな対話
はじめに:私たちの職場、どこか「冷めて」いませんか?
目次
「最近の若手は何を考えているかわからない」「表面的には問題ないが、言われたことしかやらない」 —— 日々プレイングマネージャーとして奔走する中で、部下との間に見えない壁を感じることはありませんか?
かつての職場にあったような激しい衝突やギスギスした対立はないけれど、活気もなく、優秀な若手が突然辞めていく。
そんな、どこか「冷めた」職場の空気に違和感を抱えていた時、『静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか』(高橋克徳 著)をはじめとする、今の組織課題を読み解く資料に出会いました。

静かに分断する職場 なぜ、社員の心が離れていくのか(ディスカヴァー携書) 高橋克徳 著
読み進めるうちに、「これはまさに私たちの職場で起きていることだ」と深くハッとさせられました。
「静かなる分断」と「静かな退職」の正体
ベストセラーとなった『不機嫌な職場』から17年。
今の職場は、本音が見えず、互いの心の距離が離れていく「静かなる分断」が起きているといいます。
さらに、こうした環境下で広がっているのが「静かな退職(Quiet Quitting)」という現象です。
これは実際に会社を辞めるわけではなく、表面的には業務をこなしながらも、心の中では「積極的な関与」を放棄し、「必要最低限だけやっておけばよい」とする働き方のことです。
私たち管理職は、1on1などを通じてコミュニケーションを取っているつもりでも、部下側は「本音は言えないし、気をつかうだけ」と感じており、互いに本質的な対話を避けてしまっているのが実態なのです。
「やる気がない」のではなく「構造・環境」の問題
私が最も衝撃を受けたのは、この「静かな退職」や「分断」を、「最近の若手はやる気がない」「無責任だ」と個人の問題として片付けてはいけないという指摘です。
行動経済学の視点から見れば、これは本人たちの問題ではなく、「提案してもどうせ通らない」「失敗して非難されたくない」といった経験の蓄積による、自己防衛のための合理的な適応行動なのです。
バブル崩壊以降の成果主義や、正社員と非正規社員、フルタイムとリモートワークといった立場や働き方の違いが「見えない壁」を作り、お互いを理解し合えない構造を生み出してしまいました。
問題は「人」ではなく、私たちが無意識に放置してきた職場の「環境」や「構造」にあったのです。
解決のカギは「立場を超えた対話」と「小さな仕掛け(ナッジ)」
では、この分断をどう乗り越えればいいのでしょうか。
本書が提示するカギは「対話」です。
多様な価値観を前提とし、互いの立場や考えを尊重し、理解し合おうとする努力が不可欠です。
とはいえ、いきなり「本音で話そう」と言っても逆効果でしょう。
そこで役立つのが、日常に組み込める行動科学の「ナッジ(小さな仕掛け)」です。
たとえば、直接的な業務の話だけでなく、1on1で「最近嬉しかったこと/困ったこと」を必ず聞くようにして感情を出せる心理的安全性を作ったり、チャットツールに「ありがとうチャンネル」を設けて感謝を可視化したりする工夫です。
こうした「さりげない設計」が、少しずつ職場の感情を動かし、関係性を回復させる糸口になります。
おわりに:まずは「聴く」ことから始めよう
今、管理職は、上と下からのプレッシャーに挟まれ、自分自身の余裕すら失いがちです。
忙しさにかまけて、部下との対話を後回しにしたり、制度を導入しただけで満足したりしていなかったか……痛烈に反省させられました。
「静かなる分断」を防ぎ、活気あるチームを取り戻すためには、まず私たちから部下の声に耳を傾け、彼らの価値観を認める姿勢を見せることが第一歩です。
明日からの1on1では、少しだけアプローチを変え、彼らの「感情」に寄り添う小さな対話を始めてみようと思います。
組織の未来に不安を感じている同世代のマネージャー層に、ぜひおすすめしたい一冊です。

