迷える大人たちへ。喜多川泰『いただきます。』で知る、働くことの本当の意味

いただきます。人生が変わる「守衛室の師匠」の教え 喜多川泰 著
「何のために働くのか」という問いの前に
目次
社会人になって、がむしゃらに走ってきました。責任と重圧に耐え抜きました。
しかし定年が見えてくると、ふと足が止まる瞬間があります。
「自分はあと何年、こうして働き続けるのだろう」
毎日同じことの繰り返しに見える仕事に、情熱を持てなくなってしまう。
そんな閉塞感を抱えている同世代の方にこそ、喜多川泰さんの『いただきます。』を読んでほしいと思います。
この本は、単なる感動小説ではありません。私たちの心にこびりついた「仕事とは生活費を稼ぐための手段である」という固定観念を覆し、働くことの喜びを思い出させてくれる一冊です。
物語の舞台は、大学の守衛室。そこで出会う「仕事の達人」たち
本書のユニークな点は、その舞台設定にあります。
主な舞台は、ある大学の守衛室。そこに勤務するのは、人生の酸いも甘いも噛み分けた3人のおじさんたちと、たまたまバイト情報を見てなんとなく入ってきた一人の若者、翔馬です。
一見、地味で変化のない職場に見えるかもしれません。
しかし、この3人のおじさんたちは、ただ時間を潰しているわけではありません。彼らはそれぞれ、過去に事業の失敗や家族との別れなど、壮絶で辛い経験を持っています。
けれど、彼らは過去を悔やむのではなく、その傷を糧にして、「いかに次の世代へバトンをつなぐか」を真剣に考えながら働いているのです。
「誰でもできる仕事」なんて、この世に一つも存在しない
守衛の仕事は、旗を振って車を誘導したり、挨拶をしたりする定例業務が中心です。
私自身もそうでしたが、若い頃や仕事に慣れてきた頃は、こうしたルーチンワークに対して「誰がやっても同じだ」「つまらない」と感じてしまいがちです。
しかし、守衛室のおじさんたちは教えてくれます。
「誰でもできる仕事であっても、それを『誰がやるか』で圧倒的な差がつくのだ」と。
挨拶ひとつ、誘導ひとつにとっても、そこに「相手への思いやり」や「プロとしての矜持」が込められていれば、それは感動を生む仕事に変わります。
仕事がつまらないのは、仕事の内容のせいではありません。
私たちが、その仕事を「つまらないもの」として扱っているからなのです。
仕事は、一番上手な人のところにやってくる
本書の中で語られる言葉の中で、特にハッとさせられるのが、この一言です。
「仕事は、一番上手な人のところにやってくる」
私たちはつい、「大きな仕事がしたい」「やりがいのある仕事がしたい」と願います。
しかし、目の前の小さな仕事を疎かにしている人の元に、大きなチャンスは巡ってきません。
与えられた場所で、誰よりもその仕事を上手に、心を込めてこなす。
そうすることで初めて、周囲からの信頼が生まれ、次のステージ(仕事)が向こうからやってくるのです。
定例業務に力が入らないと感じている時こそ、この言葉を思い出してください。
目の前のその作業を「世界一上手にやってやろう」と思った瞬間、退屈だった時間は、自分を磨く修練の場へと変わります。
物語の中で、翔馬の友人・龍弥(昔の遊び仲間)がラーメン屋でバイトをして、その後自分でラーメンを作れるように店長にいろいろと教わります。
そして翔馬を招いての一人試食会で、翔馬に一言、問いかけます。
「どうよ?」
「うめえに決まってるだろう。俺はラーメンだけじゃなくて、これを作れるようになるまで練習したおめえの時間も喰っているからな。そんなのうめえに決まってんだよ」
人生はいつからでも、何度でも始められる
守衛室のメンバーの姿を通じて、私たちが受け取る最大のメッセージ。
それは、「人生はいつからでもやり直せる」という希望です。
10代の若者である翔馬はもちろん、40代、60代のおじさんたちも、それぞれの場所から新しい一歩を踏み出そうとしています。
過去にどんな失敗があっても、今がどんなに苦しくても、命ある限り、私たちはいつでもリスタートを切ることができます。
今、我々がいる「今日」は、人生の折り返し地点に過ぎません。「もう遅い」なんてことはないのです。 彼らの姿を見ていると、「自分もまだまだやれる」「ここからまた始めよう」と、身体の奥底から静かな勇気が湧いてくるのを感じます。
まとめ:明日からの仕事に、あなたの「名前」を刻もう
この本を読み終えた後、あなたの仕事への向き合い方は一変するはずです。
「いただきます」と言って他の命からエネルギーを受け取り、そのエネルギーを使って、目の前の仕事を「誰にも真似できない自分だけの仕事」に昇華させる。
それが、私たちの生きる意味であり、次の世代への責任でもあります。
仕事に、人生に迷いを感じているすべての人へ。
大学の守衛室で繰り広げられる、優しくて熱い「魂の授業」を、ぜひ受けてみてください。
今65歳の私も、まだまだ始められる、と勇気づけられました!

