資本金要件3000万円時代に、小さなインド料理店が直面する“静かな危機”
はじめに
目次
埼玉県狭山市にあるインド料理店。
ナンの香ばしい匂い、気さくなママさんと家族で切り盛りする温かい雰囲気。
こうした小さな店は、地域の食文化を豊かにし、外国人コミュニティの生活基盤にもなってきました。
私は特定技能制度を活用して、インド人を日本に呼び寄せています。
その際、埼玉県狭山市周辺で働くインド人は、日本入国日の最初の夜にここでカレーを食べています。
しかし今、その多くが“制度変更”によって追い詰められています。
2025年10月から、外国人が日本で会社を設立する際の資本金要件が500万円 → 3000万円 へと大幅に引き上げられました。
AERA Digital の報道でも、この変更がインド・ネパール料理店に深刻な影響を与えると指摘されています。
この制度は「不正対策」を目的としています。
しかし実際には、真面目に経営してきた小規模店ほど最も大きなダメージを受けるという、皮肉な構造が生まれています。
小規模店は“資本力”ではなく“誠実さ”で勝負してきた
多くのインド・ネパール料理店は、500万円前後の資本金で開業し、地道に地域に根ざしてきました。
- 店主は毎日厨房に立つ
- 家族総出でホールを回す
- 利益は薄くても、常連客を大切にする
こうした店は、資本力よりも「誠実な労働」で成り立っています。
しかし、制度が求めるのは誠実さではなく3000万円という“数字”です。
3000万円の壁は、真面目な店ほど越えられない
大手チェーンや富裕層の投資家なら、3000万円は“投資額”として扱えます。
しかし、小規模店にとっては現実的ではありません。
- そもそも開業時に借入をしている
- 利益率は高くない
- コロナ禍のダメージから完全に回復していない
こうした状況で、3年以内に3000万円を用意するのはほぼ不可能と思われます。
つまり、制度は「不正を排除する」よりも、真面目に働く小規模店を排除する方向に作用してしまうのです。
“繁盛していても”ビザ更新ができないという理不尽
AERA Digital の記事でも紹介されているように、店が繁盛していても、ビザ更新時に資本金要件を満たせなければ経営者はビザを失い、店を閉めざるを得ない状況になります。
これは、経営の実態ではなく、形式的な資本金額だけで判断されるということです。
- 売上が安定している
- 地域に愛されている
- 雇用を生み出している
こうした“実績”は評価されません。
影響は店だけでなく、家族・地域社会にも広がる
ビザが更新できなければ、店主だけでなく家族も日本にいられません。
- 日本で生まれた子ども
- 日本の学校に通う子ども
- 日本語しか話せない家族
こうした人々が、制度変更によって突然“帰国”を迫られる可能性があります。
さらに、地域社会にも影響が出ます。
- 空き店舗が増える
- 食材業者や不動産業者の売上が減る
- エスニックタウンが衰退する
制度の影響は、外国人だけの問題ではありません。
本当に必要なのは「資本金」ではなく「経営の実態」を見る仕組み
不正対策が必要なのは確かです。
しかし、資本金額だけを基準にするのは、あまりに粗い制度設計です。
本来見るべきは、
- 実際に営業しているか(日本に実際に住んでいるのか?)
- 売上や雇用があるか(実際に営業しているのか?)
- 税金を納めているか(年金、健康保険に加入しているのか?)
- 地域に貢献しているか(営業して税金を支払っていれば、それだけで地域貢献になるのでは?)
こうした“実態”です。
真面目に働く小規模店を守りながら、不正を排除する方法は他にもあるはずです。
終わりに:小さな店の灯りを消さないために
日本の街角にあるインド料理店は、単なる飲食店ではありません。
- 異文化交流の場
- 外国人コミュニティの拠点
- 地域の食文化を支える存在
その営みが、制度変更によって静かに消えていくとしたら、失われるのは“外国人の店”ではなく、日本社会の多様性そのものです。
制度の目的が「不正対策」であるなら、真面目に働く人々を守る仕組みとセットであるべきです。
外国人増加によるトラブルはゼロではありません。
しかし、それを排除という方向性で解決するのではなく、実体確認と相互理解という方向性で解決はできないのでしょうか?
この問題は、私たち一人ひとりが考える価値のあるテーマだと思います。

