問いが人を育てる ― 野村克也の思考法と成長の原則
以前、野村さんの『言葉一つで、人は変わる』を読みましたが、とても参考になる内容でしたので、今回は「問いかけ」を読んでみました。

「問いかけ」からすべてはじまる 野村克也 著(詩想社新書)
はじめに
目次
年齢を重ね、管理職や経営の立場に立つと、「人を育てること」の難しさを痛感する場面が増えてきます。若い頃のように自分が前に出て結果を出すのではなく、「人を通じて成果を出す」ことが求められるからです。
そんな中で、野村克也さんの言葉や思想は、マネジメントの本質を静かに、しかし鋭く突いてきます。
彼の根底にあったのは、単なる技術論ではなく、「問い続ける姿勢」でした。
すべての成長は「なぜ?」から始まる
野村さんは、結果に対して必ず問いを立てました。
なぜ打てなかったのか。なぜ失敗したのか。なぜあの判断をしたのか。
問いを持たない失敗は、ただの失敗で終わります。
しかし問いを持つ失敗は、次の成功の種になるのです。
私たち自身の人生を振り返っても、成長の転機は「なぜうまくいかなかったのか」「なぜ満足できなかったのか」と深く考えた瞬間にあったのではないでしょうか。
管理職として部下と向き合うときも、まず必要なのは答えではなく、「問いを共有する姿勢」なのかもしれません。
失敗する人と伸びる人の決定的な違い
年齢を重ねるほど、人は失敗を避けようとします。
しかし本当に差がつくのは、「失敗したあとにどう向き合うか」です。
伸び続ける人は、失敗の原因を検証し、「次はどうするか」まで考え抜く。
一方で、同じ失敗を繰り返す人は、原因に踏み込まず、振り返りを曖昧にする。
マネジメントの役割は、失敗を責めることではなく、「失敗を学びに変える環境をつくること」です。
失敗を恐れる組織より、失敗から学べる組織のほうが、長期的には強くしなやかになります。
模倣と問いが“本物の実力”を引き出す
野村さんは、成長の初期段階では「優れた人を真似ること」が有効だと説きます。
模倣はプライドを傷つける行為のように思われがちですが、実際には最短で実力を高める近道なのです。
40代、50代、60代になってもなお成長を続ける人は、「学ぶ姿勢」を手放しません。
若い世代から学ぶことを恥とせず、「なぜ彼らは成果を出せるのか」と問い続けます。
模倣に問いが加わったとき、それは単なる真似ではなく、“自分の力”へと昇華していきます。
結果は遅れてやってくる ― 努力の本当の意味
長く働いてきた方ほど、「努力してもすぐには報われない」という現実を知っているでしょう。
成果は往々にして遅れて現われます。
野村さんは、努力を信じながらも、「本当に前進しているのか」を問い続ける重要性を語っています。
努力を続ける忍耐と、努力を検証する冷静さ。
この両方を持つことが、年齢を重ねても成長を止めない秘訣なのだと思います。
指導とは教えることではなく、考えさせること
管理職になればなるほど、「答えを与える」場面は増えます。
しかし、野村さんの考えは真逆でした。
指導とは、答えを教えることではなく、「本人が気づくように導くこと」。
「なぜそう判断したのか」「別の選択肢はなかったか」と問いを投げかけることで、人は主体的に考え始めるのです。
答えを与え続ける上司のもとでは、部下は考えなくなる。
問いを与える上司のもとでは、部下は育つ。
これは野球だけでなく、企業経営や組織運営にも通じる普遍的な原則なのでしょう。
違和感に気づく人だけが変われる
人は慣れの中で安心し、同時に思考を止めてしまいます。
長年の経験は強みになる一方で、変化への抵抗にもなり得ます。
だからこそ大切なのは、「違和感」に気づく力です。
どこかおかしい、何かがズレている、今までのやり方では通用しない。
そうした感覚こそが、次の成長への入り口になります。
本当に悩み、苦しんだとき、その中にこそ答えがあります。
問い続ける限り、人は年齢に関係なく変わり続けることができるのです。

