デリーに立ちこめる白い空気: PM2.5が日本の8倍になる季節の裏側
今インド出張中です。終日モヤっています。
11月から始まる「モヤ」の季節
目次
インド北部、特にデリー周辺では、11月から2月にかけて大気汚染が最も深刻になります。
ホテルで朝カーテンを開けると、そこに広がるのは曇りではなく、白く濁った「モヤ」の空気。
視界は霞み、遠くのビルは輪郭を失います。
実際に現地では「今日は空気が重いね」という会話が日常的です。
原因① 農地焼きとディワリの花火
北インドでは稲刈り後、短期間で畑を次の作付けに切り替えるため、稲わらの野焼き(ストロー・バーニング)が行われます。
これにより大量のPM2.5が発生し、風に乗ってデリー一帯に流れ込みます。
さらに、光の祭典ディワリでは、花火・爆竹が大量に使われるため、汚染物質が一気に増加します。
デリーでは花火が法律でほぼ全面禁止されています。
しかし近隣州では時間制限付きで許可され、結果的に汚染は広域に拡散します。

*街中で花火が上がり、空気が白く濁ります(Dish TVより)
近年は煙を減らした「グリーン花火(グリーン爆竹)」も登場しましたが、普及はまだ途上です。
※このような記事も出ています ニューデリーの正月は命がけ(Yahoo!ニュースより)
原因② 冬の気象条件が汚れを閉じ込める
冬のデリーでは、逆転層と呼ばれる現象が起こりやすくなります。
これは、地面が冷え、上空が暖かくなることで、空気の流れが止まる状態です。
結果として、排ガスや煙が地表近くに閉じ込められ、空全体が白く濁ります。
なぜ1月〜2月はさらに悪化するのか
冬が深まると、霧(smog)と湿度が高まり、汚染物質がさらに沈み込みます。
また、一部地域では暖房のために薪・石炭等が燃やされ、ススが増加します。
PM2.5はどのくらい違うのか(日本との比較)
PM2.5の濃度を日本(東京)と比べてみます。
デリーの年間平均:80〜100 µg/m³
東京の年間平均:10〜14 µg/m³
つまり、デリーは日本の約8倍の濃度です。
さらに、インドでは死亡者の約7人に1人が「大気汚染が原因」とも言われています。

*この写真は白くボケているわけではありません。このように白いモヤがかかっています(Dish TVより)
実際に現地で感じた「空気の重さ」
出張中のガジアバードでの滞在中、朝に窓から外を見ると、外の空気は湿った煙を含んでいます。
外に出ると目がしみる……まではさすがになりませんが「空気がうまくない」と感じます。
街中を歩く人々は慣れた様子ですが、その分、この状況が「日常」になっていることの深さを感じます。
終わりに ─ 成長と環境の両立へ
急速な経済成長、人口増加、そして生活文化。
その中で、インドは今まさに環境とのバランスを学ぶ過渡期にいます。
「発展は止めない。しかし空気は守る」
そのための技術・政策・市民行動が、これから大きな鍵になるはずです。

