音楽座『リトルプリンス』東京公演を観て ― 大切なものは“目に見えない” 企業の人間関係に通じる3つの示唆 ―
先日、音楽座のミュージカル『リトルプリンス』東京公演を観てきました。勉強会でご一緒させていただいている方のお嬢さんが音楽座メンバーとのことで、紹介してもらいました。

原作(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ作『星の王子さま』)を読んだのは学生の頃でしたが、改めて舞台で見ると、大人になった今だからこそ深く響くメッセージがありました。
特に私が強く感じたテーマについてお話しします。
私が感じた3つのテーマ
目次
大切なものは目に見えない
王子さまがキツネから教わる「大切なものは目に見えない」という言葉。
これは、日々の仕事に追われる大人に最も必要な視点だと、改めて感じました。
サラリーマンは会社で、数字・KPI・評価指標がどうしても中心になります。しかし、数字に表れない「安心感」「信頼」「尊重」といった要素があるからこそ、人は力を発揮します。
特に40〜50代のマネジメント層は、“見えている成果”に目が行きがちですが、部下が伸びるかどうかは、目に見えない関係性の質で決まります。
- 意見を言える空気があるか
- 失敗を責めるのではなく、次の行動につなげられるか
- 日々の小さな声かけが積み重なっているか
こうした「見えない努力」が、人と組織を着実に強くしていきます。
あなたの「大切にしているもの」「価値観」などは、あなたの言葉で(ストーリーで)語られていますか?
関係を結ぶことで、相手は唯一無二になる
キツネの「君がそのバラのために費やした時間が、バラを特別にする」という言葉。
これは人間関係の本質そのものです。
職場でも同じで、
“時間をかけて向き合った相手ほど、関係の質が高まり、お互いが特別になる”ということです。
たとえば、忙しいときほど部下の話はつい“効率的に”聞こうとしてしまいます。
しかし、短い時間でも「ちゃんと向き合う」ことを積み重ねるだけで、相手の信頼は大きく変わります。
- その人の背景や価値観を知る
- どんな仕事が好きか、どんなスタイルで力を発揮するかを知る
- 得意なこと・苦手なことを理解する
こうして関係を“育てて”いくことで、初めてチームは一体感を持ち、メンバーは「ここで働きたい」と感じるようになります。
人間関係は決して“自然に良くなる”ものではなく、育てるものなのです。
実例を挙げてみます。
自分が忙しいタイミングに部下から相談を受けたら、オプションは2つです
① 今その話を聞こう、でも10分しかないから、今解決しなかったらその続きを後でやろう
② 今は時間が取れないから、午後4時に声をかけてくれないか? その時は時間がとれるから
などなどが必要で、私はこの2つ以外は無いと思います。
単に「後で聞くから」とか「資料をもらえれば後で読むから⋯」等では、部下のモチベーションが下がることはあっても、上がることは無いと思います。
旅をして初めて、自分の大切なものに気づく
物語の中で王子さまはさまざまな星を旅し、最後に「自分のバラ」が何より大切だったことに気づきます。
これは、環境や視点を変えて初めて、本当に大事なものが見えるという比喩でもあります。
現代の企業でも同じで、
- 異動
- 新しいプロジェクト
- 新規メンバーとの出会い
- 外部研修
といった“環境の変化”が、自分の価値観を更新するきっかけになります。
特に中堅〜ベテラン層は、知らず知らず同じ視点に固まりがち。
だからこそ、外に出ることで「何を大事にしたいのか?」を再発見できるのです。
たとえば、
- 「自分が本当に求めている働き方」
- 「自分にとって大切なチームの在り方」
- 「大事にしたいコミュニケーションのスタイル」
こうしたものは、環境が変わって初めて浮かび上がることがあります。
最近は異動や転勤を拒む傾向がある、と聞きます。
しかし自分の生活を守りつつ、なるべく新しい環境に身を置くことで、様々な経験ができ、そこから自分の新しい考え方や価値観に気づくことが多いです。
私は昭和のサラリーマンなので、多くの転勤を経験しました。
「結果として」今は多くのことを知ることができた、と思います。
企業における人間関係をどう構築するか?
『星の王子さま』の3つのテーマは、そのまま企業の人間関係づくりに応用できます。
目に見えない関係性を育てる
- 数字より先に、対話と信頼を重視する
- 小さな感謝や承認を積み重ねる
- 安心感のある関係が成果を最大化する
時間をかけて“関係を結ぶ”
- メンバーの個性を知る
- 雑談も含め、定期的に向き合う
- 「あなたのことを理解したい」という姿勢が信頼を生む
新しい視点を得るために“旅”をする
- 異動、研修、他部署との交流で視野を広げる
- 視点が変われば、人の見え方・仕事の価値も変わる
- 自分の大切なものを再確認する機会をつくる
終わりに
音楽座の『リトルプリンス』は、純粋な物語の奥にある普遍的なメッセージを、美しい音楽と演出で改めて気づかせてくれる舞台でした。
そして気づいたのは、この物語は決して“子どものための物語”ではなく、むしろ大人こそ読み返し、感じ直すべき一冊だということです。
企業で働く私たちにとって、
「目に見えない大切なものを育てること」
「関係を結ぶ時間を惜しまないこと」
「視点を変えて、自分の大切なものを見つめ直すこと」
これらは、どんなマネジメント理論よりも本質的な学びかもしれません。

