『ザ・ロイヤルファミリー』が教えてくれた——“相手本位”の働き方と人事の本質
今(2025年秋)日曜21時からTBSテレビで『ザ・ロイヤルファミリー』を放映しています。
主人公の妻夫木聡は泣き虫で、とても感情をあらわにするナイスガイです。
私は彼のファンなので、原作本を読んでみました。
『ザ・ロイヤルファミリー』に描かれる「馬を中心に置く世界」
目次

『ザ・ロイヤルファミリー』 早見和真 著
『ザ・ロイヤルファミリー』は競走馬を扱った物語ですが、読み進めるほどに、そこに描かれているのは単なる競馬小説ではないと気づかされます。
主人公の周囲の人々は皆、「馬は何を望んでいるのか?」「どうすれば最も幸せに走れるのか?」を真剣に考え続けています。どのレースに出すべきか、レース後はどこで休ませるか、誰が担当すべきか等です。そして、引退のタイミングさえも「馬主ではなく、馬自身がどう感じているか」を尊重して判断しようとしています。
その姿勢に、私は強く心を動かされました。
読後に感じた大きな恥ずかしさ
読みながら、私はサラリーマン時代に部下へ異動や職務変更をお願いしてきた数々の場面を思い出しました。
当時の私は、「この異動は彼・彼女の成長につながる」と信じ、本人のためになると自分に言い聞かせていました。しかし、本書に触れたことで、「私は本当に相手の気持ちをどれだけ聞き取れていたのだろうか?」と深い恥ずかしさに襲われました。
面談はしていましたが、それは本当に相手が100%自由に意見を言える時間だったのでしょうか。
今考えれば、私の“善意”はどこか一方通行だったのではないかと思います。
サラリーマン時代の人事施策をふり返って
人事施策とは、本来なら相手の将来と心に寄り添うべきものです。
しかし、忙しさや組織の都合に追われると、「異動ありき」で本人の意向を聞くような形になってしまうことがあります。
『ザ・ロイヤルファミリー』の世界では、馬の立場や心を何より大切にし、その上で最適な環境を整えていきます。
私はその姿勢に触れて、自分の“配慮の浅さ”を突きつけられたように感じました。
“相手を本当に尊重する”とはどういうことか
本書の登場人物たちは、馬を対等な存在として扱います。
馬がどう感じているか、何を望んでいるかを考える姿勢は、人に対してもそのまま当てはまります。
相手が本当に納得しているか、安心して意見を言えているか。
そうした“当たり前のようで難しい問い”を、本書は静かに読者に投げかけてくるのです。
本書が私に残した気づき
『ザ・ロイヤルファミリー』は、馬と人がともに相手を思い合う姿を通じて、“相手本位で考える”ことの大切さを教えてくれました。
私はこの本を読み終えたとき、かつての部下への接し方を振り返りながら、「これから関わる人たちにはより丁寧に向き合おう」と心に決めました。
馬を大切にする登場人物たちの姿勢は、人との関わり方にも深く通じる——そのことを教えてくれた一冊でした。

