Googleの多様性推進

はじめに

2010年頃だと記憶しています。
当時はダイバーシティ推進という言葉が浸透し始めたころです。

あるコンサル会社主催の「ダイバーシティ」セミナーに参加して、その時に「インクリュージョン」という言葉に出会いました。

今度はこの2つがキーワードか!? とそのときはまだ十分に理解できませんでしたが、ダイバーシティ推進事例として登壇された3社の人事部の方々から聞いたお話は、とても印象に残っています。

A社(外資系飲料メーカー)
 「グローバルな数値目標を設定しています。日本での目標達成率はほぼトップクラスです」

B社(日系サービス業)
 「社内数値目標を設定し、外部のシンクタンクの協力を得つつ、目標を高めています」

A、B社とも、男女比、年齢構成、役職における女性比率などをきちんとデータ化されていました。

最後がGoogleの日本支社の方です。
とても恐縮して「すいません、ダイバーシティに関するデータを何も持っていません。社内に無いんです」と説明されました。

司会の方が少し慌てつつ、男女比は? 女性管理職比率は? 外国人比率は? などを聞いても、「ありません」との回答です。

Google日本支社の人事データには、男女、年齢、国籍等のデータを入力する欄がなく、データを取れない、とのこと。

採用では、社内で募集があると、それをグローバルで応募して、その応募した人と面談して、募集要件に合えば採用しています、とのことでした。

「結果的に、女性、外国人が多い職場になっています」と説明されたことが、とても印象に残っています。

これが結果的な「ダイバーシティ」なんだな! でもそれが現実に起きている組織がある!



2025年になり、米国では、DEI(多様性、公平性、包摂性)の見直しが始まりました。
これは、「数値目標が逆差別につながる」という主張が大きくなりつつあることを背景にしているようです。
だからと言って、DEIを止めます、とは言っていません。より「インクリュージョン」を進化させましょう、とのことです。

今後、企業はGoogle式の採用と組織運営ができるのでしょうか?

(私が調べた範囲ですが)Googleが企業内でDEI(多様性、公平性、包摂性)目標を設定せず、採用において多様性を実現する方法には、企業文化と採用プロセスにおける独自のアプローチが影響しています。 Googleの取り組みは、数値目標に依存するのではなく、結果的に多様性を自然に実現する方法に焦点を当てています。


以下の5つのポイントに分けて詳しく説明します。

Googleの取り組み

「多様性」を目標にしない採用プロセス

Googleは、企業内で「多様性を目指す」ための数値的な目標設定を行っていません。

その代わり、採用において最も重要なのは、「業務における能力や適性を重視すること」です。

候補者の選定は、特定のバックグラウンドや人種、ジェンダーに基づくものではなく、「その人が企業にどれだけ貢献できるか、スキルや経験がどれだけフィットするか」を中心に進められます。 このアプローチによって、自然に多様な人材が集まりやすくなるとしています。

「適材適所」を重視した採用

Googleの採用基準は、特定の属性やバックグラウンドに基づくものではなく、候補者が求められるスキルセットや役割にどれだけ適しているかを重視します。

これにより、無意識のバイアスが排除され、結果的に多様な背景を持つ候補者が平等に選ばれる機会が増えます。 多様性を「結果」として捉え、その過程で多様な人材が自然に選ばれるようになっています。

文化的適合性よりも業績への貢献を重視

Googleは、従業員の「文化的適合性」を過度に強調することなく、業績やチームへの貢献に重きを置いています。

企業文化に合致するかどうかを判断する際にも、多様な価値観を受け入れる柔軟性を持ち、異なる視点を尊重する風土を築いています。このアプローチにより、特定の文化や背景に偏らない多様な人材が採用され、結果として多様性が実現します。

データと科学に基づいた意思決定

Googleは、採用プロセスや従業員のパフォーマンスに関するデータを多く収集し、それを分析することで最適な判断を下します。

候補者の選定においても、データ駆動型の意思決定を行うため、無意識のバイアスや偏見を排除し、純粋に職務に最も適した人材を採用することが可能になります。

このアプローチにより、多様性が自然に実現されるのです。

ダイバーシティ、インクルージョンを組織文化として根付かせる

Googleは、多様性や包摂性を単なる目標ではなく、組織文化の一部として組み込んでいます。

多様性を意識的に追求するのではなく、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人々が共に働き、成長できる環境を提供することに重点を置いています。

これにより、従業員が自身のバックグラウンドが尊重されると感じ、自然に多様性が生まれ、職場全体にポジティブな影響を与える文化が形成されています。

まとめ

Googleのアプローチでは、DEI活動を「目標達成型」の数値目標として設定するのではなく、採用プロセスや組織文化において多様性を自然に実現する方法を採用しています。

能力や業績を重視した採用と、無意識のバイアスを排除するためのデータ駆動型意思決定が、結果的に多様な人材を集めることにつながり、企業文化としての包摂性を築いています。

このように、Googleの方針は「多様性が結果的に実現される」ことを目指しており、他の企業がDEI活動を進めるための参考となる、重要なケーススタディと言えるでしょう。

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