インドとパキスタンが争うカシミール問題を歴史・宗教・政治から読み解く

はじめに

2025年5月7日、インド軍がパキスタン領内9か所を空爆しました。

今回の直接的原因は、パキスタンを拠点とするテロ組織が、インドが実効支配する北部カシミール地方でインド人観光客を殺害した事件を受けてのことです。

インド、パキスタンとも核保有国であり、緊張が高まっていると、新聞報道がありました。

日本では、「インドのカシミールはどこにあるの?」「何が原因で両国はもめているのか?」はあまりピンとこないかもしれません。

下記の内容は、谷口がわかる範囲で調べた内容であり、かつ宗教が絡むので、どちらの宗教視点で見るかによって、事象の理解が異なってきます。

私は、インドで7年弱生活し、ヒンズー教の友人が多いので(もちろんイスラム教の知人もいますが)インド+ヒンズー教視点バイアスが入った説明、と理解してください。

なぜカシミールは争いの火種なのか

歴史的経緯と帰属の曖昧さ

1947年のイギリスからのインド・パキスタン分離独立時、カシミールは「藩王国(プリンシリー・ステート)」であり、インドにもパキスタンにも属していませんでした。

イスラム教徒が多数を占めるにもかかわらず、ヒンドゥー教徒のマハラジャ(藩王)が支配しており、最終的にインドへの編入を選択。

これに反発したパキスタン軍と武装勢力が侵攻、以後インドとパキスタンの間で3度の戦争(1947、1965、1971)が勃発(その後1999年にも衝突)。

カシミールの帰属問題は、インドとパキスタンの国家アイデンティティに深く関わる「未解決の歴史問題」との位置づけです。

宗教と民族の対立構造

カシミールの住民の約70%がイスラム教徒であり、イスラム国家パキスタンとの文化的・宗教的つながりを感じる住民も多い。

一方、インドは多宗教・多民族国家としての統合と世俗主義を掲げ、カシミールの分離独立やパキスタン編入を認めていない。

この結果、『地元住民 vs インド政府・軍』という対立構造も強まり、独立運動や過激派の活動が長年続いている。 「宗教の違い」だけでなく、「政治的抑圧」や「人権侵害」への不満も根強く、地域の不安定化を招いている。

地政学的重要性と核兵器の影

カシミールは、インド・パキスタン・中国という3つの核保有国が接する戦略拠点。

中国もまたカシミールの一部(アクサイチン地域)を実効支配しており、インドと中国の国境紛争の火種にもなっている。

インドとパキスタンの間では、カシミール問題が核戦争の引き金となる可能性も懸念されている(特に1999年のカルギル紛争時)。

この問題は、地域紛争でありながら、世界の安全保障に直結する国際的リスクをはらんでいる。

宗教が生む分断:イスラム教とヒンドゥー教の対立

カシミール住民の約70%以上がイスラム教徒。しかし、インドは多宗教国家であり、ヒンドゥー教徒が多数派。

パキスタンは「イスラム国家」として成立し、カシミールを「イスラム教徒の土地」と主張。

宗教的なアイデンティティが、政治的な帰属をめぐる対立に直結。

ヒンドゥー民族主義(ヒンドゥトヴァ)の高まりが、カシミールにおけるインド政府の強硬姿勢を強めた。

政治的な駆け引きと国際関係

インドはカシミール全域の領有権を主張。
一方、パキスタンも同様にカシミールを「未解決の領土問題」と主張。

国連は住民投票を提案したが、インドはこれを拒否。

中国もカシミールの一部(アクサイチン)を実効支配し、三国間の複雑な対立構造に。

アメリカやロシアも軍事・外交上の思惑から影響力を行使。

現在の状況と今後の展望

インド政府は2019年に自治権を撤廃して以降、治安を強化。インターネット遮断や報道規制も。

武装勢力の活動は断続的に続き、民間人の犠牲も増加。

一方、インド・パキスタンの間には核兵器の存在があり、全面戦争は避けられているが緊張は継続。

おわりに

歴史・宗教・政治が複雑に絡み合う事件は、日本に住んでいる限り、めったに感じないと思います。
日本も近隣国との問題はありますが、陸続きの国境で接しているインドとパキスタンに比べれば、過激な対応をするまでは行っていません。

さらに、宗教が絡むと、何が正しいのか? を論理的に考え、解決することは難しくなります。

理由なしに、○○宗教は受け入れない。それは、我々の宗教とは信じるものが違うからだ、という当たり前の理由で、違いを理解するのではなく、違いを拒絶することは、普段宗教的生活をしていない私には理解ができていない側面です。

このインド・パキスタン問題をより理解することで、宗教・政治・地政学を少しですが理解することが出来ました。

今後は、両国問題が平和的に解決できることを願っています。

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