ただの愚痴じゃない!『店長がバカすぎて』が描く、愛すべき「バカ」たちの人間的魅力

『ザ・ロイヤルファミリー』を読んで、「馬視点での展開があり面白かった」とブログに書きましたが、次は「バカ」がおすすめと聞いて、早速読んでみました。


『店長がバカ過ぎて』 早見和真 著

「バカ」という言葉が持つ共感性

『店長がバカすぎて』というタイトルを聞いて、思わず手に取ってしまいました。

この「バカ」という言葉は、確かに過激です。
しかし、職場の理不尽さや、あまりに的外れな上司の言動に触れたとき、誰もが心の中で一度は吐き出したいと思う、普遍的な感情が込められた言葉ではないでしょうか。

この物語には、主人公の谷原京子を翻弄する人間性が強すぎる「6人のバカ」が登場します。
彼らは単なる無能な人物ではなく、それぞれの信念やこだわり、そしてどうしようもない欠点を持っており、その「バカ」ぶりにこそ、妙な人間的魅力が感じられるのです。

主人公・京子の周りにいる、愛すべき「人間的なバカ」たち

私が特に印象的だったのは、やはり中心人物である店長の存在です。
彼は、場を読まずに、どこかで聞きかじった受け売りの言葉を自信満々に発します。

その言動は滑稽で、時には京子さんの神経を逆撫でしますが、彼が物語に不可欠な強烈な個性とユーモアを与えていることも事実です。

主人公の京子さんの目を通して見れば、周りはみなバカに見えるかもしれません。
しかし、その「バカ」たちもまた、人間的な弱さや愛らしさを抱えている。

この作品は、彼らの不器用さや欠点込みで、人間を深く愛でるようなまなざしを感じさせてくれます。

バカな状況でも「食らいつく」主人公の矜持

そんな個性的なバカたちに囲まれ、「理不尽!」と日々感じる職場で働く主人公・京子さん。
彼女のイライラや葛藤は、多くの読者の共感を得ることでしょう。

しかし、京子さんがすごいのは、決して書店を辞めない点です。
理不尽な状況にひたすら食らいつき、前を向いて進んでいきます。

その原動力となっているのが、彼女が胸に秘める「本」への深い愛と、書店員としてのプロの矜持ではないでしょうか。

本離れが進む時代だからこそ、「良い本を見つけて発信し、それを買ってもらうのが私たちの仕事」と考える店員さんたちの姿勢に、私は心を打たれました。

この使命感こそが、京子さんをめげずに突き動かす力なのです。

多くのサラリーマンが共感する「めげずに前を向く姿」

店長の的外れな企画や、無意味な責任の押し付けなど、京子さんの周りには常にストレスの種が尽きません。

しかし、彼女がその都度諦めずに、粘り強く自分の仕事に集中し、問題に立ち向かっていく姿は、まさに多くのサラリーマンが日常で経験することを代弁しているように感じられます。

私たちは皆、多かれ少なかれ、職場での理不尽さや、不本意な状況に直面します。
そんなとき、「もう辞めたい」「この環境から逃げたい」と思うのが正直なところでしょう。

京子さんが見せる「めげずに前を向いて進む姿」は、読者にとって、共感であると同時に、明日を生き抜くための小さな勇気を与えてくれます。

バカな上司がいるからこそ、京子さんのプロとしての輝きや、本への情熱がより一層際立つのです。

タイトルの「バカ」からのメッセージ

タイトルが強烈なだけに、この物語を単なる「職場での愚痴を笑い飛ばすコメディ」だと思って読み始めた人もいるかもしれません。

しかし、読み進めるうちに、本書が持つ奥深いメッセージに気づかされます。

物語の終盤に明らかになる覆面作家の正体や、店長が抱える意外な秘密。
それは、単なるお仕事小説では終わらない、ミステリー的な深みを加えています。
そして、この伏線回収によって、私たち読者の「バカ」な店長に対する印象は大きく変化します。

もしかしたら、彼は本当にただのバカだったわけではないのかもしれない——。

読後、これはアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)かも? と気づく——。
この視点の転換こそが、この物語の最大の魅力です。

自分の価値観だけで人を「バカ」と断じることの危うさと、それでも、理不尽な状況をユーモアと愛をもって乗り越えることの大切さを教えてくれる、非常に心に残る一冊でした。

まとめ

『店長がバカすぎて』は、職場の理不尽に悩む全ての人に読んでほしい作品です。
主人公の本を愛する姿、そしてめげずに食らいつく姿に、きっと力をもらえるはずです。

読み終えたとき、あなたの心の中の「バカ」に対する見方が少し変わっているかもしれませんよ。

あなたの周りの「愛すべきバカ」について、コメント欄で教えてください!

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