Z世代はなぜ「ほめられたくない」のか? 40代管理職が知るべき『いい子症候群』のトリセツ
はじめに:Z世代の若者は、なぜ「皆の前でほめられたくない」のか?
目次
「先生、どうかみんなの前で褒めないでください」
もし、あなたの部下がこんなことを言ってきたら、どう感じますか? おそらく多くの40代以上の管理職は「せっかく評価してやっているのに、なぜだ?」と困惑するでしょう。
今回ご紹介する書籍『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』(金間大輔 著)は、金沢大学および東京大学の教授である著者が、教育現場で接するリアルな学生たちの姿から、現代の若者たちの本音を浮き彫りにした一冊です。
Z世代の若者たちは「何を考えているのかよくわからない」と言われる一方で、「とても良い子で真面目」とも評されます。同じ若者でも、見る角度によって全く異なる解釈ができるのです。
本記事では、この書籍を紐解きながら、現代の若者たちをどう理解し、どうマネジメントしていくべきかを考えていきます。

先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち 金間大輔 著
「いい子症候群」の正体とは? 〜究極の横並び主義と目立つことへの恐怖〜
現在の若者たちの多くは「いい子症候群」と呼ばれています。
彼らは協調性があり、非常に爽やかです。頼まれた仕事はしっかりとこなしますが、「それ以上のことはやらない」という特徴があります。
彼らの行動原理の根底にあるのは「目立つことへの恐怖」です。
縦のつながり(上下関係)を過剰に怖がり、何よりも同世代の「横の空気」を大切にします。
ルールには従順ですが、他者との競争を極端に嫌うのです。
著者の金間教授によれば、学生にとって最も嫌な授業は「先生から指名されて答えること」だと言います。クラスの中で一人だけ目立ってしまうのが耐えられないからです。しかし、「匿名でスマホから回答してください」と指示すると、途端にたくさんの意見が集まります。
この「目立ちたくないが、意見はある」という感覚こそが、昭和世代にはなかなか理解しがたい令和のZ世代のリアルなのです。
さらに驚くべきは、彼らの「分配」に対する考え方です。
何かを分配する際、半分以上の学生が「完全な平等分配」を求め、「努力に応じた分配」を支持するのはわずか約25%に過ぎません。
究極の横並び主義であり、会社で社長から表彰されるような栄誉すら、彼らにとっては「目立ってしまう大きな迷惑」になり得るのです。
なぜ彼らは「指示待ち」になったのか? 〜我々大人が作り上げた無菌室〜
彼らは自分に自信がなく、自分で物事を決めることに臆病になっています。
そのため、「この仕事を1からやってみて」と裁量を与えられると、フリーズしてしまいます。しかし、「このサンプル(過去事例)を参考にして作って」と指示を出せば、途端に素晴らしいアウトプットを出してきます。
では、なぜ彼らはこれほどまでに「横並び」を意識し、「指示待ち」になってしまったのでしょうか?
その大きな原因の一つは、彼らの親世代(つまり我々40代以上の世代)にあります。
親世代は就職氷河期を経験し、正社員になるために血の滲むような苦労をしてきました。
だからこそ「子供には幸せになってほしい」と願い、先回りしてサポートし、手厚く指示を与えてきたのです。
さらに、学校教育においても「競争よりも協調」が重視されてきました。
運動会の徒競走で順位をつけず、手をつないでゴールする。
走っても結果は同じで、みんなが平等に称賛される環境で育ってきました。
つまり、Z世代の気質は、我々大人が良かれと思って作り上げた環境の産物とも言えるのです。
手厚く守られ、競争を避けてきた彼らが、いざ実社会に出たとき、一人で戦うことは非常に困難です。
だからこそ、仲間を大事にし、目立たないように振る舞い、新たな挑戦を避けるようになるのは、当然の帰結かもしれません。
成長意欲はあるが「トップは狙わない」 〜令和のワークライフバランス〜
「競争したくない」からといって、彼らにやる気がないわけではありません。
むしろ自己研鑽への関心は高く、就職活動などでも「どのような研修制度がありますか?」と熱心に質問してきます。
しかし、その強い意欲は「トップに立ちたい」という方向には向きません。
横並びを気にする彼らにとって、一番安心できるポジションは「真ん中くらいの成績」なのです。
ワークライフバランスや人間関係の捉え方も独特です。
職場の飲み会には参加しますが、それは「先輩と深い関係性を作りたい」「熱く仕事の夢を語りたい」からではありません。「周りの同期が参加するなら、私も参加しておこう」という、横の空気を読んだ同調行動のレベルなのです。
40代管理職が実践すべき「Z世代マネジメント」3つの鉄則
「目立ちたくない」「均等に分配してほしい」「自分で決めるのは嫌だ」、でも「社会貢献はしたい」。
一見すると矛盾しているように思える彼らの価値観を前に、会社はどのような対応をとるべきなのでしょうか。
管理職が実践すべき鉄則は、以下の3つです。
① 明確な指示と「過去事例(サンプル)」を渡す
昭和の時代のように「適当に見繕ってやっといて」「君のセンスに任せるよ」という丸投げの指示は全く通用しません。彼らは「答え」を待っています。「あなたの仕事の範囲はここまでです。参考になる過去事例や文献はこれです」と、手本となるものを具体的に渡すことが必須です。
② 「成果」と「貢献」を具体的に言語化する
指示を出すと同時に、その仕事が持つ意味を伝えることが重要です。「この業務をやり遂げることで、あなた自身にこのようなスキル(成果)が身につく」「これは会社の〇〇という事業にこう貢献している」と、明確に言語化してあげてください。彼らは社会貢献や自身の成長には強い関心を持っているため、意味づけが腹落ちすれば高いパフォーマンスを発揮します。
③ みんなの前で過度に特別扱いしない
彼らの努力を認めることは大切ですが、全体会議で一人だけを立たせて大々的に褒めるような演出は避けましょう。個別の1on1ミーティングなどで、個人的にしっかりと感謝や承認を伝える方が、彼らの心には響きます。
おわりに:彼らの「貢献意欲」を最大限に引き出すために
Z世代と昭和世代は大きく違います。
しかし、彼らを「指示待ちだ」「覇気がない」と嘆く前に、我々管理職が認識すべきことがあります。
それは、彼らが育ってきた時代背景や教育環境を作ったのは、他でもない我々の世代だということです。
彼らは決して能力が低いわけではありません。
ただ、活躍するための「OS」が違うだけなのです。
彼らの特性である「協調性の高さ」や「社会への貢献意欲」を上手く引き出すマネジメントにアップデートすることこそが、これからのリーダーに求められる最大の役割と言えるでしょう。

