フィンランド・マリン首相のリーダーシップ論をホフステード文化次元から読み解く
CQエバンジェリストの谷口です。
(CQ: 文化の知能指数 Cultural Intelligence Quotient)
フィンランドからマリン首相が来日され、今後のフィンランドと日本のデジタル領域での強化について議論されました。
同時に、ロシアと1300キロに渡り国境を接しているフィンランドは、現在の軍事的中立の立場からNATO加盟へと大きく方向転換をしています。
マリン首相はインタビューで、
「現代のリーダーシップとは、多くの団体や国民の声を聞き、巻込むこと。環境が激変する現代だからこそ、議論が欠かせない。」
と言われました。
フィンランドはどんな国?
この記事を書く前の私、個人的な理解としてのフィンランドは、
・スカンジナビア半島に位置する
・サンタクロースとムーミン
程度でしたが、歴史を調べると・・
・スウェーデンとロシアの間に挟まれる小国のフィンランドですが、過去は1808年フィンランド戦争が勃発する前にすでに数百年に渡ってスウェーデンとロシアの間に数え切れない軍事衝突が起こっていました。
ロシア領になり、第一次大戦後のロシア帝国崩壊時に独立するも、第二次大戦でロシアに侵攻されるも、独立維持をかけてロシアと戦い、勝利するもその後は軍事的中立を保ってきました。
そして、ロシアのウクライナ侵攻を契機に、フィンランドは軍事的中立からNATO加盟に動きました。
(詳細はこちら)大国スウェーデンとロシアに挟まれたフィンランドの生き残り
ホフステード文化指数比較
個人主義 | 権力志向 | 確実性 | 達成志向 | 時間 | 人生の楽しみ方 | |
フィンランド | 63 | 33 | 59 | 26 | 38 | 57 |
日本 | 46 | 54 | 92 | 95 | 88 | 42 |
フィンランド及びスカンジナビア諸国の特徴として、権力格差が少なく(上下関係が密接)かつ達成が低い(成し遂げたのではなく、弱者へのサポート)のが特徴となります。
マリン首相のリーダーシップ論の前提
「現代のリーダーシップとは、多くの団体や国民の声を聞き、巻込むこと。環境が激変する現代だからこそ、議論が欠かせない。」
これはマリン首相の言葉ですが、特徴として「多くの声を聴き・・議論が欠かせない」とあります。
リーダーシップを一言では語れませんが、
・俺についてこいタイプ
・個人が働きやすい環境をつくるタイプ
などがありますが、
マリン首相は「多くの声を聴き・・議論が欠かせない」を重要視し、これはホフステード文化次元的には、
・低い権力格差:首相と国民が同じ目線で政治を考えるという姿勢
・低い達成度(弱者共済の意識が強い):だれの意見が勝った(通った)ではなく、多くの国民(大きな声、小さな声などさまざまな声の主)との議論を重ねるという姿勢
が基本的な考えです。
日本の政治や企業統治において、密室政治(的)な決定が行われていますが、フィンランドにおけるリーダーシップの考えから、国民文化の違いを感じます。
幸福度調査で1番
2022年度調査結果は、
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 アイスランド
4位 スイス
5位 オランダ
54位 日本(昨年56位より2ランクアップ)
フィンランドはなぜ幸福度が高いのか?
(なぜ日本の幸福度が低いのか? は後日発信します)
フィンランドを含む北欧では、「普通が一番良い」という言葉があります。
つまり、勝ち負けよりも平等と個々の尊重を重んじるので、私は「勝ち組だ」と言う人に対しては冷ややかな視線が向けられる傾向があります。
モチベーションの源泉については、一人ひとりが自分の城(領域)を持ち、その領域には責任を持っているので、干渉しない・されない環境が大事とされています。
会議では、多数決ではなく、関係者全員が関与して合意することが求められます。
よって、多くの会議が発生しますが、「合意すること」が大切なので、そこへの労力は惜しみません。
これらの点をホフステード文化から観ると、
フィンランドの権力志向:33
達成志向:26
が大きな理由となります。
権力志向が低い、つまり参加型のマネージメントが求められます。
達成志向が低い、つまり弱者救済型:多くの参加者の声を聞く姿勢が強い。
この2つの文化次元が、結果的に幸福度調査で高いスコアを出す環境となっています。
ホフステード文化次元にご興味がある方は、こちら(CQラボのHP)をご覧ください。
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