多様性の高い組織の作り方 ~女性参画の組織を考える~
目次
VUCAの時代
現代のビジネスにおいて、組織の多様性は大きな成功要因となります。
仕事を取り巻く環境に変化が速く(VUCA時代)、多様な視点や背景を持つメンバーが集まることで、問題解決能力やイノベーションが促進され、結果的に組織の効率と利益率が向上するのです。
しかし、現実の多くの企業では、多様性の推進に様々な障害が存在しています。その中でも特に大きな障壁が、**OBN(Old Boys Network)**です。
VUCA:ビジネス環境や市場・組織・個人などあらゆるものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が困難になっている状況を意味する造語です。「Volatility:変動性」「Uncertainty:不確実性」「Complexity:複雑性」「Ambiguity:曖昧性」という、4つの単語の頭文字から成ります。
VUCAはもともと、冷戦終了後の複雑化した国際情勢を示す用語として、1990年代ごろから米軍で使われ始めた軍事用語です。2010年代になると、ビジネスシーンでも使われるようになりました。
OBN(Old Boys Network)とは?
OBNは、「特定の集団、特に男性中心のネットワーク」を指します。また、違う視点では「家で支えてくれるパートナーがいる男性のネットワーク」とも言われます。
その中で人事や仕事の割り振りが非公式に決まってしまう現象です。
これにより、多様な視点が排除されやすくなり、組織内の多様性が阻害されます。例えば、以下のような問題がよく見られます。
OBNの事例として
- 酒席やたばこ部屋で人間関係が形成され、そこで人事や仕事の割り振りが決まる
なかなかアポが取れない役職者でも、日に数回タバコをするので、タバコ部屋近くで 待っていると、タバコ部屋で数分の情報交換ができました。 今は、タバコ部屋が少なく(無し)なりましたが、同様の珈琲部屋、ランチ同席などがOBNとして活用されています。
- 男性同士の根回しで、会議の前に結論が非公式に決まっている
「ご相談」という名目で事前の情報交換(根回し)で、相手(決定者)の意向を 事前確認して、会議の結論を決めてしまうことが多いです。
- 育児中の女性社員に対して、過剰な配慮をして仕事を任せず、キャリアの機会が制限される
育休明けで時短勤務の女性は、「今は、仕事と育児の両立は厳しいに違いない」との判断で、「軽め」の業務を与えるケースがあります。
- 無意識のうちに女性に雑務を押し付ける風潮があり、お茶出しや掃除を女性が担当してしまう
ある会社のケースですが「お茶出し当番を廃止する。冷蔵庫にペットボトルを用意し、それをお客様を迎える担当者がお出しすること」との通達がでました。 しかし実際は、「来客時には、女性がペットボトルを用意する」という慣習が続いた、と聞きました。
こうした現状では、いくら企業トップがダイバーシティ推進を掲げても、現場の管理職が意識を変えなければ、本質的な変化は訪れません。特に、現場の男性管理職が無意識に作り出すバリアが、女性社員や他のマイノリティの活躍を阻害している場合が多いのです。
多様性の阻害要因とそれを打破する5つの方法
では、OBNや無意識の想い込み(バイアス)を打破し、組織の多様性を実現するためには、具体的にどのような対策が必要でしょうか?
OBN払拭とリーダーシップの推進
組織全体のリーダーが率先して、多様性の重要性を現場に浸透させることが必要です。
多様性は「女性のため」や「マイノリティのため」ではなく、組織全体の成長と社会の発展にとって必要不可欠な要素であることを、管理職層に認識させることが大切です。
ですから女性管理職・役員就任なあくまでも手段であり、ポイントは多様性を浸透・維持することです。
現場の管理職が無意識にバリアを作り出していることを理解し、それを取り除く責任があると認識させることで、変革が始まります。
客観的な評価基準の導入
非公式なネットワークや個人的なつながりで人事や業務が決まってしまうことを防ぐため、透明で客観的な評価基準を導入することが必要です。
スキルや実績に基づいた公正な評価を行うことで、無意識のバイアスが排除され、多様な人材が公平にキャリアを積むことが可能になります。
事前の情報交換(根回し)が悪いのではなく、根回しの内容を会議で開示し、それを会議参加者全員の同意を得るプロセスが大事です。
女性社員への過剰な配慮の見直し
育児中の女性社員に対して、本人に確認せずに「配慮」と称して仕事を与えないケースが見られますが、これもキャリア機会を奪う一因となっています。仕事を振る際には、本人に確認し、意思を尊重することが大切です。過剰な配慮によって女性の成長機会を制限することなく、業務に適切に関与させるべきです。
この場合の「配慮」は男性OBN側が勝手に考えて押し付けた「配慮」です。女性社員本人に直接事情を確認して、本人と会社側が納得できる業務を担当してもらうことが大切です。
日常の無意識バイアスの排除
お茶出しや掃除といった雑務が、いつの間にか女性に押し付けられることは、職場における無意識のバイアスの象徴です。
男性新人も組織内の仕事として、お茶出しや掃除を担当することは、バイアス排除に役立つことです。
こうした小さな偏見や不公平をなくすことが、職場の平等を実現するための第一歩です。すべての従業員が平等に雑務を担当するルールを整えることで、女性が本来の職務に集中できる環境が作られます。
多様性推進のためのデータ分析と改善
組織内での多様性の進捗を定期的にデータで分析し、継続的に改善を図る仕組みが必要です。
多様性の目標が達成されているかどうか、管理職層にバイアスが残っていないかを定期的にモニタリングし、必要に応じて戦略を修正することで、組織全体での多様性推進が効果的に進められます。
多様性目標数値に期日がないケースがありました。
業務であれば必ず締め切り日があり、その直後に予実差異と未達の場合の原因分析とその対応策が検討されました。
しかし、多様性施策が組織のマストではなく、努力目標である場合、予実差異分析等がされない場合があります。これはOBNが考えた「表向きの施策」であり、組織全体を変革されない施策と取り扱われているかもしれません(疑い深いですが)。
多様性の重要性と女性の活躍
特に女性の活躍が重要視される理由の一つは、男性中心のネットワークや無意識のバリアが、女性のキャリアを阻んでいる現状にあります。
多様な視点を持つ女性がリーダーシップのポジションに進出することで、組織の柔軟性や革新性が向上します。
また、女性リーダーが増えることで、会議前に結論が決まるような非公式な根回しが減少し、透明な意思決定が行われるようになることが期待されます。
マッキンゼー調査によると、女性役員が30%以上の企業は、利益率が1.48倍も高いと報告されています。これは、異なるバックグラウンドを持つ人材が集まることで、組織全体の問題解決力や創造力が向上するためです。
さらに、女性がリーダーシップに進出することで、チームワークやコミュニケーションが強化され、より良い職場環境が生まれます。柔軟な働き方や育児支援制度の充実も、女性が長期的にキャリアを積むためには欠かせません。
結論:多様性推進は組織の成長に不可欠
多様性の高い組織は、効率的で利益率が高く、柔軟性と革新性に富んでいます。しかし、トップ層の旗振りだけでは、多様性の推進は実現しません。特に現場の管理職層が無意識に作り出すバリアを打破しなければ、変化は訪れないのです。
女性の活躍を促進し、無意識のバリアを排除するためには、公平で透明な評価基準の導入や、仕事の割り振りにおける公平性の確保が必要です。また、女性が重要な役割を担い、全従業員が平等に業務に取り組む環境が整えば、組織全体が成長し、多様性が真の力を発揮するでしょう。
その為には、男性管理職が女性に本音(真意)を聞く勇気が大事です 。
女性は男性に忖度ない本音(真意)を伝える勇気が大事です。
そのうえで、双方が新しい立ち位置(視点)から「組織を多様化させるには何が必要か?」の議論(意見交換)ができる場つくりが大事です。
現場の管理職層が
「ダイバーシティ推進は女性のためではなく、組織全体のために必要なものだ」
と認識し、その意識を改革することが、多様性推進の成功のカギとなります。
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